加重障害について  弁護士 五十嵐 勇

加重障害とは、「既に身体障害がある者が、負傷又は疾病によって同一部位について障害の程度を加重した場合」をいい、その場合には、「その加重された障害の該当する障害補償の金額より、既にあった障害の該当する障害補償の金額を差し引いた金額の障害補償を行わなければならない」とされています(労働基準法施行規則40条5項。労働者災害補償保険法施行規則14条5項も同様)。

かなりわかりやすく簡略化して言うと、例えば、以前交通事故で後遺障害が残った部位(14級)を、さらに別の交通事故によって同一部位を悪化させてしまった(12級)ような場合、2回目の事故による損害賠償額から、14級に該当する損害賠償額を控除しますよ、ということです。また、自賠責保険の扱いとして、2回目の事故による後遺障害が既存の障害よりも高くなければ後遺障害として認定されません。(例えば14級相当であった場合は、後遺障害として認定されないのです)。

ただ、むち打ち等の神経症状の場合、既存障害がどこまで後発の障害に影響しているのかなど、判断が難しい場合があります。既存障害が2回目の事故の前に完治していたといえればよいのですが、必ずしも断定ができないことは少なくないのです。訴訟になった場合、既存障害が後発の障害に一定の影響を与えているような場合、「素因減額」といって、損害額が減額されることもあります(五十嵐)。

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