高次脳機能障害とは?
高次脳機能障害とは
高次脳機能障害とは,頭部の外傷により大脳が損傷を受け,認知,行為(の計画と正しい手順での遂行),記憶,思考,判断,言語,注意の持続などが障害された状態をいいます。
頭部に外傷を負った場合に,手足に麻痺が残ることがあるといった事,皆様もご存じだと思います。
しかし,ここでいう高次脳機能障害は,そういった運動や反射等の身体的な障害ではなく,認知機能等に障害が残り,その結果,社会適合性が欠如,あるいは低下するといった状態を指します。
高次脳機能障害の具体的な症状
高次脳機能障害では,損傷を受けた大脳の部位によって,異なった症状が出ることになります。
代表的な症状を挙げると,まず,短期記憶の障害が挙げられます。これは,事故以前のことを忘れてしまう(いわゆる記憶喪失)というものではなく,幅はありますが,直前の出来事を忘れてしまうといった事があります。ひどいときには,お湯を沸かしたものの,お湯を沸かしていたことを全く覚えていないといった事もあります。
また,言語の障害が出ることもあります。
これには,すらすらと言葉が出てこなくなり,やたらとどもるようになった,あるいは言葉はすらすら出るが内容が薄く,同じことを繰り返すようになったという症状があげられます。
さらに,簡単な道なのに迷子になってしまうといった事や,すぐに怒ったり泣いたりするようになったという人格的な変化や周囲との軋轢を生じるようになる,何かをはじめてもすぐにやめてしまうといった作業遂行能力に障害が出ることもあります。もちろん,このような症状とともに,身体機能に異常が生じている事もあります。
また,高次脳機能障害の特徴としては,本人に,自分の様子がおかしいということの自覚がないことも多いといえます。
高次脳機能障害の障害等級
高次脳機能障害は,
①意思疎通能力,②問題解決能力,③作業負荷に対する持続力・持久力及び④社会行動能力
の4つの能力の喪失の程度に着目し,等級の評価が行われます。
等級 | 認定基準 |
---|---|
1級 | 身体機能は残存しているが高度の痴呆があるために,生活維持に必要な身の回り動作に全面的介護を要するもの |
2級 | 著しい判断力の低下や情動の不安定などがあって、一人で外出することができず、日常の生活範囲は自宅内に限定されている。身体動作的には排泄、食事などの活動を行う事ができても、生命維持に必要な身辺動作に、家族からの声かけや看視を欠かすことができないもの |
3級 | 自宅周辺を一人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また声掛けや、介助なしでも日常の動作を行える。しかし記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難なもの |
5級 | 単純繰り返し作業に限定すれば、一般就労も可能。ただし新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業を継続できなくなるなどの問題がある。このため一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には、職場の理解と援助を欠かすことができないもの |
7級 | 一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができないもの |
9級 | 一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業持続力などに問題があるもの |
後遺障害として認定されるための目安
高次脳機能障害が,上記の表のいずれかの等級に認定されるためには,ひとまず,
①傷病名が,脳挫傷、びまん性軸索損傷、びまん性脳損傷、急性硬膜外血腫、急性硬膜下血腫、外傷性くも膜下出血、脳室出血であること
②傷病がCT、MRI検査で確認できること,
③当初の意識障害(半昏睡~昏睡で開眼・応答しない状態)が6時間以上継続した,もしくは,健忘あるいは軽度意識障害が1週間以上続いていること
が必要と言われています。
専門化の必要性
上記で述べた①~③は,あくまでも後遺障害として認定されるための,入口に過ぎません。
平成23年3月4日付け,自賠責保険における高次脳機能障害認定システム検討委員会による報告書内で,画像診断学を専門とする井田医師は,「画像診断だけを用いれば高次脳機能障害を評価できるということではなく,神経学的な診断とのジョイントが必要である」と述べられています。
高次脳機能障害は,大脳の損傷箇所によって現れる症状が異なるため,その症状を適切な神経学的検査(記憶力,言語力,理解力,持続力を測定する検査)を行う事によって,しっかりと描出することが必要になります。そこでは,専門家のアドバイスが不可欠です。
さらに,重度の高次脳機能障害では,将来にわたりご家族による介護が必要となります。そういった将来の介護料の請求をするためには,多くの場合訴訟による解決が必要となります。
弊事務所は,現在も数件の高次脳機能障害の案件を取り扱っており,また,必要な場合には外部の専門家との連携も行い,被害者の方やそのご家族のサポートを行っております。
交通事故被害に遭われ,高次脳機能障害の疑いがある場合,又は交通事故後における頭部外傷後、ご家族の様子がおかしいといった場合には,ぜひ一度弊事務所にご相談下さい。
江畑 博之
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