裁判所のIT化・その3 弁護士 江幡 賢

1 先日、最高裁判所が、2019年度から、裁判所と弁護士事務所をインターネットでつなぐ「ウェブ会議」を導入する方針を決めたと新聞報道されました。

 日本の裁判制度は、欧米などに比べてIT化が遅れていると指摘されていましたが、民事裁判のIT化の一環として、いよいよ新しい取り組みが始まりそうです。

 

2 導入される「ウェブ会議」とは、裁判所に備え付けられたタブレット端末と弁護士が持つ端末をインターネットで繋ぎ、会議によって争点整理を進めるという制度です。

訴訟当事者双方の弁護士事務所が裁判所から遠方にある場合など、当事者が裁判所に出頭するのに負担が大きい場合などに利用することを想定しているようです。

現在も、電話会議によって争点整理を進めることはできるのですが、電話での会議だと声だけのやりとりになり、どうしても、相手の表情がわからなかったり、伝えようとするニュアンスが十分に伝わらなかったりということがあるように思います。

今後導入される「ウェブ会議」では、端末のカメラで顔を見ながら意思疎通を図ったり、資料を同時に閲覧したりすることができるなど、電話会議での弱点を補う制度となりそうです。

また、現在の電話会議では、必ず一方の当事者は裁判所に実際に出頭しなければいけないのですが、「ウェブ会議」では、当事者双方が遠方であっても利用できる形を予定しており、この点でも使い勝手のいい制度となりそうです。

弁護士が遠方の裁判所に一日出張するとなると、スケジュールを確保するために期日が先延ばしになりがちであり、結局裁判が長引いてしまうことも少なくありません。しかし、「ウェブ会議」の利用により、それほど時間を割くことなく、少しの空き時間にも期日の予定を入れられるようになれば、結果として、裁判の長期化を防ぐことができるかもしれません。

 

3 現在、日本の裁判における書類の提出は、紙媒体での提出が原則となっています。一応、「準備書面」など、裁判で提出する書類の多数は、FAXで提出してもいいことになっていますが、一部の書類は、紙媒体の書面を実際に裁判所に提出しなければなりません。

裁判のIT化を検討する政府の有識者検討会は、訴状や準備書面などの書類を、ネットで提出できるようにするなど、手続きを全面的にIT化するように提言しています。今後、裁判所類のペーパレスにしていく方向にはなるのでしょうが、それには民事訴訟法の改正が必要なため、時間がかかるようです。

なかなか進まない裁判所のIT化ですが、それでも一つ一つ新しい制度ができつつあります。IT化によって、全ての方が利用しやすい裁判制度となることを期待しています。

 

投稿者プロフィール

江畑  博之
江畑  博之
昭和56年新潟県燕市生まれ。平成14年新潟大学工学部化学システム工学科へ入学。卒業後、平成18年東北大学法科大学院入学する。司法試験に合格後は最高裁判所司法研修所へ入所し弁護士登録後、当事務所へ入所する。交通事故被害者が適切な賠償額を得られるよう日々、尽力している。
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江畑  博之

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昭和56年新潟県燕市生まれ。平成14年新潟大学工学部化学システム工学科へ入学。卒業後、平成18年東北大学法科大学院入学する。司法試験に合格後は最高裁判所司法研修所へ入所し弁護士登録後、当事務所へ入所する。交通事故被害者が適切な賠償額を得られるよう日々、尽力している。

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