高齢者の死亡事故の場合
交通事故死者に対する高齢者の割合
全国の令和2年の交通事故死者に対する高齢者(65歳以上)の割合は56.2%となり、過去最大となりました。
新潟県内の令和2年の交通事故死者に対する高齢者の割合は、全国平均を上回る64.1%となっています。令和元年の720%よりは低かったものの、依然、高い水準で推移しています。
死亡事故における逸失利益の計算方法
死亡事故における逸失利益は以下の計算式によって算出します。
基礎収入(年収)×(1-生活費控除率)×(就労可能年数に対するライプニッツ係数)
基礎収入について
高齢者の死亡事故にあたって特に問題となるのが基礎収入の算定方法です。
以下では、高齢者の事故当時の就業状況等に応じて、基礎収入をどのように算定するか、解説いたします。
なお、高齢者が年金を受給していた場合には、事故がなければもらえるはずであった年金を逸失利益として請求することができます(詳しくはこちらのページをご覧下さい)。
①事故当時、高齢者が働いて収入を得ていた場合
この場合は、事故当時の高齢者の実際の収入を基礎収入とします。
②事故当時、高齢者は無職であったが、働く予定があった場合
働く予定があったことを証明できれば、死亡した年の賃金センサスの基礎収入を算定することがあります。
賃金センサスとは、毎年実施されている政府の「賃金構造基本統計調査」の結果に基づき、労働者の職種、性別、年齢、学歴別などの賃金水準をとりまとめた資料になります。
③事故当時、高齢者は無職で働く予定もなかったが、主婦または主夫であった場合
主婦または主夫の方は、家事を行うことによりお金を得ているわけではありませんが、逸失利益を請求することができます。
その基礎収入は、原則として、死亡した年の賃金センサスの全年齢の女性の平均賃金となります。
しかし、高齢者の場合、子供はみな成人していて別居していることが多く、未成年の子供がいる家庭に比べて行う家事の量が少ないという事情があるため、全女性の平均賃金を減額して基礎収入を算定されることがあります。
具体的には、その高齢者が属する年齢別の女性の平均賃金を基礎収入としたり、さらにそこから一定程度の割合を減額した金額を基礎収入とすることがあります。
④事故当時、高齢者は無職で働く予定もなく、家事も行っていなかった場合
この場合は逸失利益を請求することは困難です。
もっとも、年金を受給していた場合には、年金の逸失利益を請求できる可能性があります(詳しくはこちらのページをご参照ください)。
生活費控除率について
生活費控除率とは、収入の中で生活費が占める割合です。
交通事故死者の方は、死亡した後の生活費の支出を免れるため、逸失利益を計算する際には、生活費に相当する金額を控除する必要があります。
ただ、実際に支出を免れた生活費がいくらなのかを算出することは困難ですので、亡くなられた方の所得、生活状況、被扶養者の有無、性別等によって次のような割合で決められることが多いです。
一家の支柱 |
被扶養者1人 40% |
女性(一家の支柱以外) | 30% |
男性(一家の支柱以外) | 50% |
就労可能年数について
死亡事故における就労可能年数とは、被害者が事故に遭わないで生存していた場合にその後働くことができたであろう期間を指します。
就労可能年数は、死亡した年齢から67歳までの期間または平均余命の2分の1のいずれか長期の年数を用います。
高齢者の方は、後者の年数(平均余命の2分の1)を用いるケースが多いと思われます。
江畑 博之
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