主婦の休業損害
主婦の休業損害について
問題点
休業損害は、基礎収入(1日あたり)×休業日数で算定します。
会社から給与などが支給されていれば、その給与金額等を基に「基礎収入」を認定します。しかし、専業主婦の場合、給与が支給されておりませんので、どのようにして算定したらよいのでしょうか。また、通院先から帰宅して家事を行った場合、はたして「休業」したといえるのでしょうか。
基礎収入について
自賠責保険の基準では、1日あたり5700円を基準に計算します。これは兼業主婦でも変わりません。
ただし、自賠責保険の基準が変更されたため、令和2年4月1日以降に発生した交通事故については、1日あたり6100円で計算をします。
これに対し、裁判時においては、事故が発生した年の賃金センサス(女性学歴計・全年齢平均収入)をもとに計算します。
例えば、直近の統計である平成30年の賃金センサスでは382万6300円ですから、令和2年に発生した交通事故の場合は以下のように算定します。
(計算式)382万6300円÷365日=1万0483円
この1日1万0483円の収入減少があると考え、通院日数を乗じて休業損害を計算をします。
なお、兼業主婦の場合は、実際の収入と賃金センサスとを比較して、高い方をもとに計算しています。
休業日数について
主婦の場合の休業は「家事労働に従事できなかった期間」(最判昭和50年7月8日)をいうとされています。とはいえ、家事労働はいろいろな種類がありますし、どの程度できなかった場合に「家事労働に従事できなかった」と評価すべきなのか判然としません。
計算方法としては、以下の方法が考えられます。
通院日数を「休業日数」とする方法
この方法は明確で、通院した日を休業した日と考えます。例えば、実際に通院した日数が50日の場合は、1万0483円×50日=52万4150万円と算定されます。
入通院期間をもとに割合的に算定する方法
保険会社は、実通院日数を休業日数とすることに難色を示すことが多々あります。「一定程度家事を行っているのだから、通院をしたとしても、休業損害は発生しない。」と考えるわけです。
そこで、入通院期間をもとに、実際に制限を受けた範囲で、割合的に算定する場合があります。例えば、「事故直後の30日間は100%の家事ができないとしても、その後の症状固定までの90日間は50%しか制約をうけていない」といった計算をするわけです。
損害賠償金の計算方法
損害賠償金の真実を知っていますか?適正な計算方法をしっかり理解しておきましょう!
損害賠償金の真実は、多くの場合、保険会社が提示してくる賠償額は本来貰えるはずの賠償額よりも少ないということです。
保険会社は賠償額を少しでも抑え、賠償額のいずれかの項目を用い賠償金額を調整している可能性があります。
よく、「保険会社から示談の提案書が届いたけど、これはどう見ればいいの?」というご相談を頂きます。治療費や通院交通費ならまだお分かりになられると思いますが、入通院慰謝料、逸失利益、後遺障害慰謝料などは専門家の弁護士でなければ適正な判断は難しいです。
よく見方が分からないが賠償額に不満を感じる場合は、すぐに弁護士に相談し、損害計算書を作成してもらいましょう。
下記には、保険会社が示談の提案をしてくる際の損害賠償額の代表的な項目に関する注意点を記載しております。ご参考にして下さいませ。
A 治療関連費 | 治療費・付添看護費・入院中雑費・通院交通費・装具代・家屋改造費など |
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B 休業補償 | 事故で減少した収入の補償 |
C 入通院慰謝料 | 受傷(入通院)による精神的苦痛の補償 ※入通院期間と傷害程度による基準がある。 |
D 逸失利益 | 残りの人生で予想される収入減少の補償 ※事故前年収入や労働能力喪失率を基準に算定 |
E 後遺障害慰謝料 | 後遺障害による精神的苦痛の補償 ※後遺障害の等級による基準がある。 |
※死亡慰謝料、死亡逸失利益については、こちらをご参照下さい。
治療費について
相手方の保険会社や相手方の弁護士は、独自の判断により医療機関に対するあなたの治療費の支払い(立替払い)を打ち切ることがあります。そして、それまでに支払った治療費のみを、交通事故によって生じた治療費の総額として示談の提示をしてくることがあります。
しかし、相手方の保険会社が支払い(立替払い)を打ち切った後に、あなたが支払った治療費であっても、それが適正なものであれば治療費として請求できる可能性があります。
休業損害
休業損害は、収入の日数と必要な休業日数によって金額が決定致します。裁判基準では、収入とは実際の収入のことですが、保険会社は、よく低く見積もった金額を提示してくることがあります。当事務所では、実際の収入に即した休業損害を計算し、保険会社に請求を行います。
また、サラリーマン、自営業、農・漁業、幼児・学生・主婦などの職業の違いによって実際の収入の計算方法は異なりますので、詳細をお知りになりたい方はお気軽にご相談下さい。
入通院慰謝料
入通院慰謝料は、入通院日数に応じた基準により金額が決まります。この点、相手方保険会社や相手方弁護士は、自賠責保険基準や任意保険基準をもとに金額を提示してくることが多いですが、それらの基準にもとづく金額は裁判基準にもとづくものと比べると低額であることが通常です。
後遺障害の損害賠償
後遺障害の損害賠償は、①後遺障害によって仕事が制限されることの補償である逸失利益と②後遺障害による精神的な苦痛に対する慰謝料の2つに分けて考えることができます。
①逸失利益
逸失利益は、仕事が制限されることの補償であり、「交通事故前の基礎年収×労働能力喪失割合×労働能力喪失期間」で計算することができます。保険会社は労働能力喪失期間を短く見積もり金額提示を行う傾向にありますので、注意が必要です。
②後遺障害慰謝料
慰謝料は後遺障害による精神的苦痛に対する補償ですが、認定された等級が賠償金の計算基準になりますので、どの等級に認定されるかということが非常に重要になります。保険会社は裁判基準とは大きくことなる任意保険の基準を適応し提示を行ってきますので、この点にも注意を払う必要があります。
江畑 博之
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