口の後遺障害について
交通事故による口に怪我を負い、後遺障害となってしまうケースがあります。口の後遺障害は大きく4つに分けることができます。
①咀嚼・言語の機能障害
咀嚼(そしゃく)とは、食べ物を噛み砕く機能のことをいいます。
言語の機能障害とは、4種類の語音(口唇音、歯舌音、口蓋音、喉頭音)の全部または一部の発音ができないことをいいます。
※4種類の語音について
①口唇音(ま行音、ぱ行音、ば行音、わ行音、ふ)
②歯舌音(な行音、た行音、だ行音、ら行音、さ行音、しゅ、し、ざ行音、じゅ)
③口蓋音(か行音、が行音、や行音、ひ、にゅ、ぎゅ、ん)
④喉頭音(は行音)
②歯牙の障害
歯牙の障害とは、交通事故により歯に歯科補綴(しかほてつ)した場合の障害です。歯科補綴とは、歯が喪失したり、著しく損失した場合に入れ歯等の人工物で補うことをいいます。
後述するように、喪失等した歯の本数に応じて後遺障害の等級が変わります。
③嚥下障害
嚥下障害とは、食べ物を飲み下すことができない障害を指します。
嚥下障害の後遺障害等級は、咀嚼障害の程度を準用して等級が認定されます。
咀嚼と嚥下、両方の障害が認定される場合には、いずれか上位の等級の後遺障害のみが認定されます。
④味覚の障害
味覚の障害とは、4つの基本となる味(甘味、塩味、酸味、苦味)の一つ以上を認知できない障害です。
口の後遺障害の認定基準
①咀嚼・言語の機能障害
等級 | 認定基準 |
---|---|
1級2号 |
咀嚼および言語の機能を廃したもの ※「咀嚼の機能を廃したもの」とは、流動食以外は摂取できないものをいいます。 ※「言語の機能を廃したもの」とは、4種の語音のうち、3種以上の発音が不能になったものをいいます。 |
3級2号 |
咀嚼または言語の機能を廃したもの |
4級2号 |
嚼および言語の機能に著しい障害を残すもの ※「咀嚼の機能に著しい障害を残すもの」とは、粥食又はこれに準ずる程度の飲食物以外は摂取できないものをいいます。 ※「言語の機能に著しい障害を残すもの」とは、4種の語音のうち、2種の発音が不能になったものまたは、綴音機能(語音を一定の順序に連結すること)に障害があるため、言語のみを用いては意思を疎通することができないものをいいます。 |
6級2号 | 咀嚼または言語の機能に著しい障害を残すもの |
9級6号 |
咀嚼および言語の機能に障害を残すもの ※「咀嚼の機能に障害を残すもの」とは、ある程度の固形物は摂取できるものの、制限があり、咀嚼が十分ではないものをいいます。ご飯、煮魚、ハム等は摂取できるものの、たくあん、ラッキョウ、ピーナッツ等の一定の固さがある食物は摂取できないようなケースをいいます。 ※「言語の機能に障害を残すもの」とは、4種の語音のうち、1種の発音が不能になったものをいいます。 |
10級3号 | 咀嚼または言語の機能に障害を残すもの |
②歯牙の障害
等級 | 認定基準 |
---|---|
10級4号 | 14歯以上に対し歯科補綴(しかほてつ)を加えたもの |
11級4号 |
10歯以上に対し歯科補綴(しかほてつ)を加えたもの |
12級3号 | 7歯以上に対し歯科補綴(しかほてつ)を加えたもの |
13級5号 | 5歯以上に対し歯科補綴(しかほてつ)を加えたもの |
14級2号 | 3歯以上に対し歯科補綴(しかほてつ)を加えたもの |
③嚥下障害
咀嚼の機能障害の等級を準用します。
④味覚障害
等級 | 認定基準 |
---|---|
12級相当 |
味覚を脱したもの ※4味質(甘味、塩味、酸味、苦味)の全てが認知できないもの |
14級相当 |
味覚を減退したもの ※4味質(甘味、塩味、酸味、苦味)のうち、1質以上を認知できないもの |
口の後遺障害の等級認定のポイント
①咀嚼障害について
咀嚼機能の障害は、上下咬合(かみあわせ)や排列状態、下あごの開閉運動などから総合的に判断されます。
認定に際しては、他覚的な所見の存在及びその所見とそしゃく状況報告表(被害者本人または家族などが作成する書面で、色んな固さの食べ物について、食べられる、何とか食べられる、食べられない、などに区分する表)との整合性があるかがポイントとなります。
上記の咀嚼障害の基準に該当しない場合であっても、開口障害(下顎の開口が制限される状態)を原因として、咀嚼に相当の時間を要する場合には、12級相当の後遺障害が認定されます。
②言語障害
言語機能の検査は、主に医師の聴覚判定となります。
上記の言語障害の基準に該当しない場合であっても、声帯麻痺による著しいかすれ声は、12級相当の後遺障害に認定される可能性があります。
③歯牙障害
歯牙障害の後遺障害診断には専用の後遺障害診断書を使用します。
親知らず・乳歯は対象とはならないことに注意してください。
口に複数の後遺障害が残った場合の等級について
咀嚼障害または言語機能障害と歯牙障害の両方が残った場合は、咀嚼障害または言語機能障害の原因が歯牙障害である場合を除き、両方の後遺障害が認定され、併合された等級となります。
咀嚼または言語機能障害の原因が歯牙障害である場合には、いずれか上記の等級のみが認定されます。
江畑 博之
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